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【インタビュー】小石 祐馬選手 “すべては、世界を狙うために”
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2024.02.19

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【インタビュー】小石 祐馬選手 “すべては、世界を狙うために”

2023年 全日本選手権タイムトライアルで優勝した小石祐馬選手。

チーム所属7年目になる2024年。チームの活動拠点をイタリア・ミラノに移し、欧州を主戦場にシーズンを戦っていく前に、小石選手のルーツや今シーズンの意気込みを聞いてみました。

原点は、15歳で出会ったロードバイク

自転車レースの選手を目指したきっかけを教えてください

15歳の頃、当時僕はアメリカに住んでいたんですが、仲良しだった友人のお父さんがトライアスロンや自転車レースが好きな人で、彼が僕に乗らなくなったロードバイクを貸してくれたんです。思えばそれが、僕のキャリアの原点ですね。

いざ乗ってみるとシティサイクルやマウンテンバイクと違って、ものすごくスピードが出て単純に楽しかった。遠くの場所にもすぐ着いちゃうし、とにかく夢中になって乗っていましたね。

そこからレースにも参加するようになるのですね

そうです。まずは誘われるがまま、地元チームに入っていろんなレースに出場しました。そこで割とすぐに良い結果が出せて、競技自体を面白いと感じるように。ただ、プロになりたいという意識が芽生えたのはもう少し後です。

いつ頃、プロとしてのキャリアが始まるのですか?

17歳で日本に帰国するのですが、そのタイミングでNIPPOという若手選手の育成を担う団体の欧州遠征プログラムに参加したんです。そこでベルギーやイタリアなどのレースに出場したことで、プロ意識が徐々に培われていきました。やがて20歳のときに自転車やウェアなどを提供してもらい、レースに出場して賞金を獲得するような、いわゆるプロとしてのキャリアをスタートさせた感じです。

自転車レースに対する意識は、国によって違いましたか?

まず、ベルギーは自転車レースのメッカのような国です。例えば、ベルギーの選手が大きなレースで勝つと町の洋服屋さんがセールを始めちゃうほど熱狂的で、日本で言えばプロ野球くらい愛されています。一方イタリアは、そこまでの熱狂はありませんが、スポーツ全般が好きな国民性なので、日本よりも競技として成熟している印象はあります。

自分の経験値を、若い選手に伝えていく

JCL TEAM UKYOの前身である「Team UKYO」との出会いについても教えてください

2018年10月くらいに、それまで所属していた海外のチームを離れることが決まって、それがきっかけで日本チームに目が向きました。右京さんのチームは強かったし、何より海外レースにも積極的に出場していたのが好印象だったので、所属が決まったときは嬉しかったですね。

2021年Team UKYO時代の小石選手

「Road to Tour de France」というミッションを最初に聞いたときに、どう感じましたか?

JCL TEAM UKYOになる前から右京さんが抱いていた夢ですよね。選手としてもツールドフランスは最高峰のレースであり、表彰台なんて大変名誉なことなので、単純にものすごく大きな目標だと感じています。でも、けして荒唐無稽なものだとは思わなかったですね。夢を大きく掲げることが、前進なわけなので。

この夢に対して、選手としてどのように向き合っているのですか?

僕が現役のうちに果たせるかはさておき、右京さんの夢に共鳴しながらチームを牽引するのが自分の役目だと思っています。例えば、レース展開を読む力や、状況に応じた戦略の見極めなど、海外レースを戦ってきたからこそ感じる課題がこのチームにはあります。なので、これまでの自分の経験を若い選手たちをはじめ、チーム全体に積極的に伝えていこうと思っています。

ミッションを達成するために、特に日本国籍のチームには何が必要だと思いますか?

やっぱり経験と歴史を積み上げることです。変な話ですが、世界との差を痛感することさえも、必要な経験だと思います。例えば、ポーランドの場合、今から20年程前は、世界選手権でボコボコにされるほどの弱小国でした。ところが、当時の選手たちがコーチやスタッフとなって念願の初優勝を果たします。スター選手が不在の中、チームの総合力で成し遂げたことも学ぶべきポイントです。

JCL TEAM UKYOが掲げる「Road to Tour de France」もそのくらいの時間をかけて、同時にチームとしての実力を高めながら目指すべき夢だと思っています。

JCLをはじめ、サイクルロードレースの魅力を教えてください

レースの戦況自体は、駅伝やマラソンと同じでテレビの中継がわかりやすいですが、例えば競輪のようなトラック競技と違って、選手との距離感が圧倒的に近いのは大きな魅力です。目の前を猛スピードで走り抜ける自転車を観るのは、とてもスリリングな体験だと思いますね。

 

現地へ行くと、ご当地フェスのような感覚でも楽しめそうですよね

おっしゃる通りです。キッチンカーが出たり、飲食店が観客席になったり、街の一大イベントのように盛り上がります。あとはチームごとのバスやトラックがカッコよくラッピングされているので、モビリティを見るだけで楽しいと思いますね。

今を楽しみ、全力で生きる

印象深いレースがあれば教えてください

JCLだと東京丸の内のビジネス街を走ったレース(丸の内クリテリウム)ですね。国内外でいろんなレースに出てきましたが、ビル群を抜けるレースはヨーロッパにもありません。海外レースだと、中国のレースで標高4000メートルの場所を走ったこと。いつもと違う疲労感も相まって、完全に異世界にいるような感覚でした。どちらのレースとも非日常の体験で、自転車選手をやっていて良かったなぁと思いますね。

 

 

 

キャリアの中で、心に刻んでいる教訓のような言葉はありますか?

感動的なエピソードじゃないですけど、アメリカでお世話になったコーチの腕に“今を楽しみ、全力で生きる”みたいな意味のタトゥーが入っていて、最初にそれを見たとき「腕に刻むほど、この人は全力なのかぁ」と感心したことがあります。それが教訓になっているかはわかりませんが、いまだに思い出す言葉だし“楽しむことでパフォーマンスは上がる”というのは、キャリアの中で僕の信条になっていると思いますね。

自転車選手ならではの、日常でもついやってしまうことがあれば教えてください

普通のシティサイクルに乗っていても、おそらく操縦の仕方が選手なんでしょうね。減速したくなくなるというか、コーナーを曲がるのがやたら速かったりします(笑)。

勝つための“ゲン担ぎ”みたいなことをしていますか?

ゲン担ぎ、けっこうあります。まずレース前に炭水化物をガツっと食べるんですが、僕はパスタを食べると調子がいいと思っていて、なるべくパスタを選ぶようにしていますね。あとは、汚れた靴を履かないとか、落車したときのゼッケンは燃やす、もしくは、目に入らないところに片づけるとか。逆にいい結果が出たゼッケンをとっておく選手は多いですよ。特に最近のゼッケンはシールタイプなので、僕も自分のスーツケースに貼りまくっています。

すべては、世界を狙うために

JCL TEAM UKYOは2024年からイタリアのミラノにチームの拠点を構えますが、このチャレンジについて、選手として思うことがあれば教えてください

自転車レースの強豪国って、基本的にヨーロッパばかりです。オーストラリアやカザフスタンといったチームもヨーロッパに拠点を置いているので、世界で上位を狙うためにもヨーロッパに拠点を持つことはマストだと思います。特に我々が行くミラノは、すでにいろんな国の選手たちが住んでいるエリア。個人的にも5年ぶりの海外拠点になるので、すごく楽しみにしています。

新たなGMに就任したアルベルト・ボルピ氏についてはどのような印象ですか?

選手とGMという関係ですが、フレンドリーに話ができる気さくな方ですね。ワールドツアー(トップカテゴリー)の監督経験もあって助言も明確なので、いろいろと学ぶことが多いリーダーだと感じています。

2024年を選手としてどのような一年にしたいですか? また具体的に動いていることがあれば教えてください

今回の挑戦によって僕自身の環境も変わるので、この冬からパーソナルトレーナーと一緒に肉体改造をしていきます。また、ここ数年、選手としても人間としてもいろんな面で成長したと思うので、今の自分がヨーロッパでどのくらい走れるのかワクワクしているところです。なので、とにかく楽しい一年にしたいですね。

プロフィール

Profile 小石 祐馬(こいし ゆうま)
生年月日:1993年9月15日
出身地:滋賀県
脚質:オールラウンダー

2023年 全日本選手権タイムトライアル 優勝
2023年 アジア競技大会 男子ロードレース日本代表
2015年 全日本選手権タイムトライアル U23 優勝
2015年 アジア選手権ロードレース U23 優勝